激安ジーンズにもの申す

最近1000円でおつりが来るジーパンが人気だという。
その中でも特に安いのが西友の850円ジーンズ。桁を一つ間違えているんじゃないかと思えるほどの強烈な価格だ。何でも、ウォルマートの調達拠点であるバングラデシュに生産を集約することで、低価格を実現したという。西友ウォルマートの子会社だからね。


最近は円高圧力が強くなっており、それに併せてデフレ基調がさらに強まっている。特に生活必需品は安値競争が激しい。ユニクロよりさらに安い服を売る店が出てきたり、弁当の値段が300円を切ったり。僕らにとってはありがたい話なのだが、果たしてこれって手放しで喜んでいいのだろうか。否、そうではありません。安「過ぎる」ものに手を出すことには慎重にならなければ!


とりあえずやり玉に挙げるのは先に挙げた850円ジーンズ、ありえないような価格の裏には何があるのか。その仕組みを説明する。


現在は円高であるから当然輸入品は安くなる、そしてメディアに取り上げられることによる集客効果を見込んで、ジーンズの価格を他を寄せ付けない利益を度外視した衝撃的なものにしていることも考えられる。だが、それだけではない。


ユニクロなどの大手アパレル、西友・イオンなどの大手スーパーは中小企業が追随できないような激安価格を提示するが、それが可能なのは、ひとえに人件費の削減によってである。低賃金で働く人がいる国で集中的に衣料を生産する。こう書くと中国を思い浮かべる人もいると思うが、中国は成長著しく、賃金も上がってきており、大手アパレルの衣料工場の拠点は中国の周辺の途上国、バングラデシュや東南アジアに徐々にシフトしている。アジアの女工がH&Mやユニクロウォルマートの低価格を支えている…。かといって現地の産業を作り出していることも事実なので過度に感傷的になることも慎まなければならないが、ともかく今もてはやされているファストファッションはそうした仕組みでつくられている。


その中であっても850円のジーンズというのは価格破壊といえるだろうが、これはウォルマートの経営手法にも秘密がある。西友を含めたウォルマートグループは業績連動型の給与体系をとっており、営業利益・個人業績の各面から賞与給与を決定する。これはパートも正社員も同じである。成果主義で皆が平等なのは確かだが、人件費が利益に連動するので経営を圧迫することがない実に賢い(企業に都合の良い)制度である。結果的に人件費が減り、より値下げをしやすくなる。


これが大まかな850円ジーンズのからくりである。安い商品はこうしたたゆまぬ企業努力によってつくられている。それ自体は当たり前のことだ。しかし、私たち消費者は何も考えずにこうした激安商品に飛びついてしまう。だが実はその行為はそうした企業の違法スレスレの姿勢を支持することにつながってしまう。なぜ今までどの企業もジーンズを850円で売れなかったのか。極端な価格破壊の裏に不当な搾取が行われている可能性を考えなければならない。


ジーンズに限らず、価値を損なわんばかりの激安に目を奪われていると足元をすくわれることになるかもしれない。「なぜ安いのか」買う前にその理由を考えることはとても大事なことだと思う。